AEVE ENDING
(本当はずっと前から、知ってた)
急な傾斜を、ただひたすらに駆け降りる。
目的は生徒達が群がる浜辺、廃れた海。
見渡す海面には、破壊された旧文明の建物や鉄橋がその断片を見せている。
世が世なら、絶景だろうに。
そうして近づくにつれて臭気の濃度が増していく。
ヘドロの浮いた深緑色の海水からは、嘔吐を促すような悪臭。
もはや嗅ぎ慣れた臭いだ。
(アミ)
走りながら、息を弾ませてアミを呼ぶ。
広範囲のテレパスは苦手だが、特定に絞ったテレパスは出来る。
見慣れない東部の制服と見慣れた西部の制服が近くなるのに、アミからの反応はない。
(アミ)
やはり返事は返ってこない。
代わりに、今まで感じたことがないような、キリキリとした妙な空気がある。
なんだこれ、変だ。
アミに向かってテレパスを送っているのに、返事がない。
けれど確かに、テレパスは届いている。
(…アミじゃない。アミには届いてないのに、)
全く別のアダムに、テレパスが引っ張られている。
(―――方向転換してる。アミに届かない)
強力な磁力に惹かれるように、アミに向かって真っ直ぐ延びるはずのテレパスが完全に角度を変えて別の対象物へと向かっているのだ。
なに、これ。
おかしい。
ピリピリピリピリ。
なにかが脳に、直に響いている。
―――「声」、だ。
それも断片的。
言葉を判別できない。
ノイズに遮られてるように、はっきりしない。
(なんだ、これ)
けれど、だからと言って立ち止まるわけにはいかない。
足元を砂に取られながら、必死にアミの名を呼ぶ。
(…アミぃ!返事しろよ!)
浜辺では東部と西部のアダム達が、整列もせず好き勝手に清掃に入っている。
東部は、さすがと言ったところだろうか。
浜辺で思い思いに寛ぎながら、ろくなアクションも起こさずともサイコキネシスで海面の汚染物を取り除いている。
なかにはチェスやトランプに勤しみながら、片手間で作業に取り組むアダムもいた。