AEVE ENDING
ところ変わって、浜から数メートル離れた資材置き場の裏。
アダムの力で整然とまとめられた大量のそれらは、倫子の何倍もの高さに積み重なっている。
見知らぬ男子生徒達に囲まれながら、倫子はこの場所からでも見える噴水を見上げた。
ドドド、と地鳴りと激しい水音が辺りに響き渡っており、水の豊かさを象徴している。
(…勢いが良すぎるなぁ。下手したらどっか陥没するかも)
それを眺めながら、倫子は自分の考えなしの諸行に苦虫を噛んだ。
あとで雲雀に相談してみよう。
自ら起こした噴水を遠目にそんなことを考えていると、強引に襟首を掴み上げられた。
「…イタイ」
睨みつけるが、しかし目の前の男達は怯まない。
「雲雀様が働いてる横で遊んでいたのですか」
出たよ、雲雀狂信者。
以前、部屋に訪ねてきた男とはまた別のやつらだ。
その背後に四人。
三人が東部で、一人が西部。
掴み掛かってきているのは、血の気が多そうな東部の生徒だった。
「…いや、遊んでませんけど」
言い訳しても無駄だろう。
殊勝に素直に答えれば。
「嘘を吐くな!お前の姿を見れば一目瞭然なんだぞ!ただでさえ雲雀様の足手まといだというのに……」
さも憎々しげに吐き出された。
「なにか?じゃあ私が泥んこ遊びしてたって言いたいのかテメー」
こちらはもうクタクタなのだ。
慣れない繊細な能力を酷使したし、なによりあんな巨大な水を引き上げる力を消耗してしまったのだから、いつ倒れてもおかしくない。
掴み掛かられながら、寝ちゃいそうなくらい。
「イヴの分際で、神を侮辱するか!」
やる気のない倫子に憤慨したのか、男は逆上する。
その一方的な信仰心がどれだけ醜いものか、当人には解らないのか―――。
「…つぅかさー、雲雀は神様じゃねーよ」
カミサマカミサマカミサマ。
盲目な信者を携えて、あいつが喜ぶわけがないのに。
「き、さま…!」
あ、キレた。
「…いっ、」
乱暴に髪を掴み上げられたかと思えば、資材の山に背中から押しつけられた。
突き刺さるような凹凸が痛い。
何本かの無骨な手が、透けたシャツにのびてくる。
視界の端でそれを捉えるも、体は動かなかった。