AEVE ENDING
(アミ…!)
あぁ、煩い。
なんだってこんなに頭に響くのだろう。
大体、あれは僕に向けられるテレパスじゃない筈なのに。
(アミ…)
脳髄を揺さぶられるような、強烈なテレパス。
久しく感じていない感覚に、頭が割れそうだった。
けれど雲雀は、それを表に出すこともなく、なおも響き続ける声に耳を傾けた。
(アミ、どこだよ!)
ああ、泣きそう。
精神状態がかなり乱れ始めてる。
だからだろうか?
うまくテレパスを飛ばせていない。どうでもいいけど。
(…あ)
許可なく頭の中を蹂躙する声を完全に雑音扱いして、チェスに集中しようとしたその時だった。
無意識に自身のアンテナが妙なものを捕らえてしまった。
眼球が見ているものと重なるように、透明のフィルムに映し出される映像。
場所は砂浜が続く更に先。
周囲に人気はない、岩場の陰。
(…あぁ、随分と下品な顔してる)
その薄闇に隠れるように立つ、三人の東部アダム。
それから、それに囲まれるように立つ西の女生徒。果敢にも、目の前の男達を睨みつけている。
(ふぅん、これが「アミ」…、か)
どうやら礼儀知らずな声の主が探す「アミ」は、危険な状況下らしい。
会長の立場としても男としても、本来なら彼らの愚考を止めに入らなければならないのだろうが、雲雀はそんな甲斐性を持ち合わせていない。
(ごめんね、君)
そんなこと微塵も思っていないくせに、雲雀は皮肉げに浜を走り回る女子を見た。
しかし彼女は既に歩みを止め、まるで何かを読みとるように微動だにしない。
(…アミ!)
その視線が雲雀を向く。
カチリ、と時計の針が傾ぐような、妙な違和感が雲雀を襲った。
「―――雲雀様」
しかしその違和感を追求する前に、雲雀の思考は甘えるような声に遮られる。
顔を上げた雲雀が見たのは、西部の生徒会長、朝比奈雛だった。
卵形の輪郭に白い肌、人形のような瞳に、小さい唇、赤茶けた髪を緩くウェーブした、美少女。
それらはあくまで周りの人間の評価であって、雲雀からは特に感想はない。