AEVE ENDING
「、っ」
雲雀の腹立たしい言葉に反論しようと口を開けた倫子を、ササリが止めた。
「お喋りはやめ。倫子、こっち見て」
その声に初めてササリの存在に気付いたらしい。
ばっと首を半回転させて、倫子はササリを見た。
一瞬、息が止まる。
「……サッチャンだ」
半ば呆然と呟いた。
そんな倫子に、彼女は雲雀にも奥田にも見せたことのないような笑顔でにこりと微笑む。
「久しぶりね、倫子」
互いににこやかな笑みを浮かべる女二人を前に、雲雀は疑問を胸に口を開いた。
「…知り合いなの?」
その言葉に、横になったままの倫子が小さく頷く。
「奥田繋がりで、昔、お世話に、…なった」
枯れた声でそう紡ぐが、なんとも歯切れが悪い。
「そう」
なんで目を逸らすかな。嘘が下手だね。
あからさまに嘘を吐いているが、しかし今は問いただす気はない。
この場には他に大人がふたり。
きっと倫子を突き止めようとしても、邪魔されるに決まっているから。
ならば後で、二人になった頃に尋ねるまでだ。
(素直に答えるとは、思わないけど)
一先ず、この場は引こう。
「おーい」
その時、閉じられていたカーテンから奥田が顔を出した。
「倫子、目ぇ覚めた?」
倫子は横になりながらも、カーテンから顔だけを覗かせている奥田に視線を向ける。
「おく、」
「あ、喋らんでいいよ。テレパス、使えそう?」
カーテンから抜け出し、ベッドの傍へと近寄る。
腰を曲げて、倫子を覗き見た。
血色はだいぶ良くなったが、まだ体力は回復していないらしい。
眼の下にできた疲労からくる隈が痛ましかった。
「駄目よ、たきお。今の倫子にはサイコキネシスは負担がかかりすぎるわ」
倫子がテレパスを試みる前に、すかさずササリがストップを掛ける。
「やっぱし?倫子、キツいとこねぇ?」
奥田のその問いかけに、倫子は暫し考え込んでから頷いた。
身体は重いが、能力を酷使した疲労感を強く感じるだけ。
あのローリー姉弟にやられた腕以外に、特に深刻な痛みはない。