AEVE ENDING





「部屋に戻ります」

目を丸くしている奥田とササリに一言だけ言い添えて、雲雀は医務室を後にした。

呆然としたまま、取り残された二人と言えば。


「なによ、アレ。…らしくないわね」

眉間に皺を寄せ、固い声でそう発したのはササリだ。

妙な痼を残していった雲雀が、気に喰わなかった。

「なにが?」

わかっているのかいないのか、奥田はそんな彼女を横目に見やる。

「修羅の態度よ。なにあれ、気持ち悪い!策略だわ!倫子が危ない!」

両頬を覆い、鳥肌を立てているササリに奥田は首を傾げる。
同僚である彼女がなにを言いたいのかわからない。

「東部で散々、残忍な態度で先制政治していた男が!」
「先制政治…って、」
「稀に彼に逆らう馬鹿が居るのよ。それを蟻でもなぶるみたいに踏みつけて、半殺しにして。最終的には信者達が反逆者を磔(はりつけ)にして、再起不能よ」

おぞましい!

身震いするササリを横目に、奥田はふぅんと相槌を打つだけ。

「まぁ、根本的に同じだからさ、親近感でも湧いてるんじゃないの?」

―――同じ。

同じ血脈を共有する者達。


「…確かに、同じだけど」

けれど、それは。

「関係ないわ」

その罪はまるで彼らの魂の繋がりを強めるように。


「関係…、ないわ」


───それは罪、である筈なのに。








『どうして、私が選ばれたの』

一番最初の問いは、それだった。

『もう、いいや…』

次にそう諦め、けれど、願いは棄てきれぬまま。



『…かえりたい』


最初の願いは、それだった。




(―――死にたい)


そして、最期の願いは。







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