AEVE ENDING
「…橘は、貴方のなに?」
「そこも気になる?」
「貴方には、良くない噂が多いから」
慇懃な笑みをこちらに向ける。
その図太い微笑は、自分の専門分野だったはずだが。
「へぇ?いたいけな女子を泣かせちゃうような?」
負けじと肩を竦ませ、余裕ぶって見せる。
大人気ないのな、俺。
すると雲雀の表情からすっと色が落ちた。
真っ直ぐに開かれた眼は、こちらの虚言を見逃すまいと鈍く光る。
「…橘も、鳴かせたの?」
その問いはある意味、予想通りであり予想外だった。
自分にとって倫子はそういう対象ではないし、しかし若い女に見境のない自分に対する正しい疑問でもあったから。
「倫子は、論外」
だって、あの子は。
「あんな痛々しい体じゃ勃たねーもん」
真っ暗なガラス玉が、ほんの少しだけ、曇る。
───いい顔するよ、お前。
もっともっと、痛めつけてやりたくなる。
倫子をダシに使ってまで。
「それにあいつ、女として機能しないし」
───真実を知った時、「神」はどうなる?
「…どういう意味?」
眉間に深く刻まれた皺すら、その黎明さを損なわない。
「試してみればいいでしょう?」
幸い、君は男だし?
―――パンッ。
「…っ、」
頬に走った痛みは、まるで贖罪。
「これ以上、僕を侮辱するのは赦さない」
その高圧的な声に。
「…悪かった」
両手を挙げて降参。
ただ、お前に望みを託していたいのだ。
お前には、倫子を傷つける側ではなく、寄り添う位置にいて欲しいのに。
(…修羅の気質は、そんな甘くねぇよなぁ)
世知辛い世の中に、おじさん、涙でそうだよ。