AEVE ENDING








じっとりとした暗澹とした暗闇。
それに辺りを包まれた広々とした執務室で仕事に取り組んでいた男の耳に、貧困エリアでのアダムのセクションにおける支援活動は、すぐに届いた。


「…修羅が、」

ふ、と息を吐いた男の心情は解らなくもない。

「汚染されていない地下水脈を引き上げたそうです」
「政府がそれを差し押さえようとしましたが、他のアダムがそれを阻止したとか」

執務中の男の機嫌を損なわぬよう、部屋の隅に置かれたソファに腰掛けているオッドアイの姉弟―――双子は囁くように話をした。


「…崇拝する神の所業を人間如きに侵されては、家畜の名が廃ろうからな」

男は淡々と双子に返す。
手にしたペンの動きは淀みない。
その言葉に不満を表すかのように、双子は揃って唇を尖らせた。

「…けれど、神の尊い所業を人間如きが我が物にしていること自体、赦されざる行為ですわ」

忌々しげに吐き出したオッドアイの少女に、その弟も小さく頷く。

「神の力を、人間如きに遣わせるなど不愉快です」

双子は苛立たしげに爪をかちりと歯で挟み、主人である男の執行をただ見つめる。

さらさらとペンが走る音。
窓の外には、渦中である貧困エリアの篝火が煌々と見えていた。


「───ならば、」

静かな執務室に、妖しい白が光る。
かちりと置かれた羽ペンから落ちたインクの黒が相反する陰を作るが、すぐに辺りの薄闇に溶けていく。

双子が立ち上がり、主人の言葉を待つ。



「壊してくればよい」

神の従者である貴様等に、虫螻を踏み潰すことなど造作もないことであろう。

妖しく光る濁った白の、それは傀儡の糸。


「───滅茶苦茶に、遺恨すら残さず、潰してこい」






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