AEVE ENDING
「…っ雲雀!」
どうしようもなくなって、半狂乱で叫ぶしかなかった。
頭の中を駆け巡る悲鳴があまりにも居たたまれなくて、痛みとは違う涙が滲む。
雲雀の腕に、無意識に力がこもった爪が喰い込んだ。
「…また流れてきた」
「…え、」
雲雀の呟きに、倫子がハッと顔を上げる。
「君、思考はおろか声までだだ漏れするから嫌いだよ」
雲雀は溜め息交じりに呟くと、倫子の頭を乱暴に引き上げた。
「掴まってて」
頭をかち割る勢いで鷲掴みにされ、制服のシャツに鼻を押し付けられてくしゃみが出そうになる。
「…っ、」
は、と息を吐く前に全身が震え上がり、ぞわりと皮膚が細波み、細胞が分裂する。
めき、と背骨が軋んだ。
「───っい゛、…っ」
周囲にある空気の亀裂にずるりと全身が引きずり込まれる感覚。
ビリビリと脳髄が痺れ、息が詰まる。
(…当初より、負担が大きい)
テレポートという高度な能力。
それを造作もなく行う雲雀の潜在的な力の核に、倫子の中のアダムが反応している。
しかし今はそんなことを考えている場合ではない。
いつの間にか、頭の中に響き続けていた子供の声が、ぶつりと途絶えていた。
―――燃えさかる贖罪の炎に、身を焼かれて苦しむことの辛さを、私は知らない。
「これは、」
テレポート後、倫子は荷物のように乱暴に地面に下ろされた。
しかし、倫子は目の前の光景に息を詰め、文句すら浮かばない。
幾つもの篝火で照らされた貧困エリア。
昼間、アダム達によって整備されたはずの居住区は今や見る影もない。
重ねられていた資材と共に居住用のテントは破壊され、あちこちで火の手が上がっていた。
荒れた道には負傷した人々が塵屑のように転がり、風に乗って煙や血、肉が焦げた臭いが鼻を掠める。
「…なに、これ」
絶句する。
この惨状はなんだ。