AEVE ENDING




「…あぁ、」

立ち尽くす倫子の隣に立つ雲雀が、不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「馬鹿ふたりの気配がする」


ゴッ…!



「うわ!」

倫子の声を掻き消した轟音と共に、視界の端で爆発が起こる。
爆風で体が浮きそうになるが、雲雀が髪を掴んでそれを支えてくれた――ありがたいが、痛い。

轟々と火の粉や資材が吹き飛んだ先──炎に照らされた夜闇の中、ふたつの痩身がこちらを見ていた。
緑と赤のサイケな四つ眼が、にんまりと細められている。


「…ローリー姉弟」

そう呟いた倫子に、双子の手が翳される。

「…!」

腹に風の塊を受けたような衝撃。
内臓を圧迫されて、激しく噎せた。

「私達、ローリーじゃないわ」
「僕はロゥで、彼女はリィだ。伸ばさないでくれないか?間抜けだ」
「…ッゲホ、知るか、クソローリー野郎が」

いちいちまともな会話が成り立たない。

(なんでこう、私のまわりにはバイオレンスな奴等しか集まらないかな…)


「それは君も充分バイオレンスだからじゃないの?」
「…ウルセーヨ!」

隣に立つ玲瓏な男は無駄口を叩きつつも、目前に現れた双子を見据えたまま動かない。

「それで、君達はなにをしているの?」

なんの感情も窺えない表情で、雲雀は双子に問い掛ける。
その澱みない態度は、この惨劇を前にしているとは思えないほどに。

「…っ、神様」

問われて初めてその存在に気付いたかのように、リィは戸惑いに頬を染めた。

「失礼致しました…。お見苦しいものを」

その隣でロゥが頭を垂れ、揺れた法衣の裾が火の粉を散らす。
真白の法衣が炎に照らされ、橙色に染まっている。

「…答えて」

下らない陶酔に付き合う気はない。
口調をきつくして、更に問う。




< 332 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop