AEVE ENDING
まるで抗えない絶対神を前にしたように、雲雀の問い掛けに双子は萎縮して声を震わせた。
「…我々は赦せなかったのです、我らが主よ」
「貴方様の神聖な力のおこぼれを、人間如きがものにしていることが」
双子は互いを補うように言葉を紡いだ。
しかし口にした言葉は、信仰心を理由に殺人を正当化しようとしているだけ。
倫子には、理解できない。
「…なに言ってんの?そんなつまんない理由で、こんな…」
そこまで口にして、倫子は絶句した。
遠耳に、あちこちから上がる悲鳴が鼓膜をつんざく。
その中に混じる、低い空を突き抜けるような、高く未完成な声。
「───…っ、」
あの子だ!
そう判断した瞬間、じっとしてはいられなかった。
悲鳴の聞こえた方向へ勢い良く走り出してしまった倫子を横目に、雲雀は小さく息を吐く。
遠ざかる足音を聞きながら、何事もなかったかのように双子へと向き直った。
「それで?僕の業績を踏みつけておいて、無事で帰れると思うの?」
倫子の手柄を自分のものにするつもりはないが、これ以上、事をややこしくしたくない。
少なくともそう思わせておけば、彼ら相手に多少の横暴は許されるだろう。
「…かみさま」
雲雀の威圧的な態度に、炎に揺らめくオッドアイがさくおののいた。
怯えるだけの服従心に満ちたそれは、雲雀にとって酷く不快だ。
しかし彼らは退かない。
怯えながら、それでも崇拝する神の慈悲に縋るように。
「…いいえ、神様。私たちと共にいらしてください」
「この世界の、貴方は頂点に立つべきお方なのです」
拳を胸の上に置き、まるで天上の神に祈るが如く。
───神よ。
そんな詭弁、聞きたくもない。
雲雀が耳を済ませば、エリア内のあちこちで上がる悲鳴。土煙や爆発も絶え間ない。
この惨劇をがむしゃらに駆け抜けている小さな身体が、ふと思い出された。
(…莫迦だね)
雲雀が意識を集中させれば、その喧噪がぴたりと止む。
アダムの力───物質破壊の力を応用した反作用。
反発する物質を鎮めるように力を浸透させれば、誘爆も火災も防げる。
(これで少しは、橘も楽かな)
なにせ考えなしに突っ込むあの馬鹿っぷりは矯正しようがない。
(…別に橘を助ける気はないけど、また怪我でもされたら後が面倒だし)