AEVE ENDING
「か…っ、みさま」
火花が弾ける音、家屋が倒壊する音がなくなると、辺りはしんと静まり返った。
住民達の悲鳴だけが尾を引く中に、リィの悲鳴染みた声が響く。
黒い静謐を思わせる雲雀の視線が、ゆるりと音もなくそちらへ流れた。
それに脅えながらも、リィは「神」を仰ぎ見る。
場を鎮めたことが倫子への手助けになると気付いたのか、その瞳には小さな嫉妬すら垣間見えた。
「…貴方様は、あのような賤しい女の傍に居てはなりません…!」
その言葉に、雲雀は少しだけ眉間に皺を寄せる。
「なに、ソレ。橘のこと?」
何故、倫子の話が出てくるのか。
彼らが固執しているのは「神」であり、役立たずの橘倫子ではない筈だ。
「…僕も話を聞きました。あの女は、あの恥知らずは、雲雀様の隣にいるべきじゃない」
リィに続き、彼女と同じ容姿を持つ弟が言う。
憎々しげに、或いはこちらを憐れむような表情すら、同じに。
雲行きが怪しくなってきたこの事態に、雲雀は鼻を鳴らした。
「確かに橘は恥知らずだけど、君達が言ってるのはそれじゃないようだね…」
あの秘密を知っているのか。
どちらにせよ、倫子に対する双子の執着心は異常だった。
それとも、崇拝する「神」に執着しているからこそ、「橘倫子」という人物に着眼せずにはいられないでいるのか。
―――けれど。
「橘が僕に対してどう恥知らずなのか、言ってみなよ」
彼らが倫子に嫌悪感を抱いているのは解るが、その理由は?
「神」である雲雀が、狂信的な自分たちを差し置いて倫子のような能なしを傍に置くことに対しての嫉妬なのか―――しかし、これでは弱すぎる。
そんな理由で、ここまで平常を乱すだろうか。
少なくとも彼らは実直な偶像崇拝者であり、アダムとしてもハイクラスの者達である筈だ。