AEVE ENDING
そんな彼らを、乱すもの。
「───橘は、何者なの?」
本来ならば本人を捩じ伏せて聞き出すことなのであろうが、目の前の双子を利用しない手もない。
雲雀は玲瓏な笑みを浮かべ、双子を真正面から見据えた。
その真っ直ぐな視線に、双子の全身の細胞が歓び、打ち震える。
「早く」
―――「神」自身からの催促に、双子は恍惚から我に返ると、先を急ぐように口を開いた。
「あの女は、存在そのものが神への冒涜なのです…!」
「浅ましい人間達の腐敗した手で作られた、あってはならない紛い物です。あんなものが神に御言葉を掛けられることすら、罪に近いのに…!」
───雲雀様。
貴方様は馴れ合いのなかにいてはならない。
「「我々と共に、この腐敗した世界の頂点へ」」
「…下らない」
吐き棄てた言葉は絶対的な高圧を持ち、双子を凍らせた。
「前にも言ったけど、僕は君達が望む理想郷には興味ない」
襟に巻いたリボンを緩く解き、雲雀はにやりと口角を釣り上げた。
じわりと上昇した雲雀の意識の高さに、リィとロゥが慌てて身構える。
「それに、」
白魚のような指先が周囲の火種に照らされて、ちらちらと輝いた。
手入れもされていない爪はそれでも美しく輝き、周囲の光を反射して、双子にゆるりと向けられる。
―――バチッ。
「…っぃ」
雲雀の動作と連動して、ロゥの頬が細く焼き切れた。
細く走った赤い線から、じわりと血が滲んで白の法衣に落ちる。
「……かみさ、」
悲鳴を上げたリィが縋るように雲雀を見上げたが、その視線に映ったのは無慈悲を象る、「修羅」の姿に他ならなかった。
「───君達が僕の暇潰しにケチをつける権利もない」
キ、ィィ──…バチンッ。
雲雀の艶やかな声と共に、辺りに漂っていた空気が凝縮されて、圧縮に耐えられず弾け飛ぶような音が辺りに響いた。