AEVE ENDING
「きゃあっ」
振動した空気が旋毛風となって双子達を覆う。
それらはひとつではなく、あちこちで小さな竜巻が巻き起こり、その規模を徐々に強めていく。
爆発染みた空気操作は、過去歴代のアダムの中でも希有の能力である。
それをまるで指先で遊ぶように行う「修羅」に、双子は全身総毛立った。
この無垢で偉大な新人類のひとりが、自らの敵であることがこれほど恐ろしいとは。
───神様。
絶え間なかった暴風がふいにやみ、傷だらけになった双子が息を吐く。
息を整えながら、唐突にやんだ攻撃に双子は何故かと問うように雲雀を見遣ると―――。
「馬鹿が呼んでる。じゃあね」
横顔を向けたまま、神は痩身を翻してしまった。
「…っ神様!」
仮にも彼を捕らえに来た刺客に背を向ける厚かましさと底なしの自信に、双子は僅かながら屈辱を覚える。
「お願いします…!あの方から、今度こそ連れて帰るように申しつけられています故…っ」
「手荒な真似はしたくありません…!」
双子が必死になって叫ぶがしかし、「神」は全く興味を示さない。
その穏和ともとれる足運びは、破壊された資材をするりと抜けて闇夜に紛れようと揺らめいた。
その影を追うように、オッドアイの双子は手を振り上げる。
ぞわりと背筋が粟立つような空気が雲雀の背中を襲った。
しかしさすがというべきか、当然というべきか、やはり彼が怯むわけもない。
「…邪魔」
肩越しに向けられた眼は煩わしそうに細められていて、それだけで双子の腰は抜けそうになる。
「さっきから頭の中で馬鹿が泣いてるんだ。黙らせなきゃ」
なにせこちらが幾らシャットアウトしても、隙間から勝手に流れてくる。
「…ほんと、不可解だよ」
双子には理解しにくい私情を口にしながら、雲雀は再び歩き出した。
「かみさまっ…」
背後からリィが叫ぶ。
(―――雲雀!)
それと被さるようにして、倫子が雲雀の頭の中で叫んだ。
(全く…)
頭痛がする。
背後からしつこく足止めをする双子の信者にも、頭の中で泣き喚く悲鳴にも。
あの馬鹿と会ってから、他人に構われることが明らかに増えた。芳しくない、非常に。
「僕は、かみさまなんて名前じゃない」
そこに果たして傲慢は在ったのか。