AEVE ENDING
「…なに、してるの」
双子を無理矢理黙らせて向かった先。
こちらに背を向ける形で資材の隙間に埋もれている倫子を見つけた。
火が弾ける音に紛れて耳につく嗚咽。
気を遣うわけでもなく、そんな彼女に声を掛ける。
「、っ」
呼び掛けに反応した倫子は、震えたままの表情で、肩越しに振り向く。
「っう…ぇ、」
真っ赤な両目から大量の涙を流し、鼻水を垂らした顔が雲雀を捉えた。
「…きったない顔」
その震えた眼が、なにを伝えようとしているのかは明白で。
資材に隠れた膝に、なにがあるのか。
「ひば、…っ」
こちらに助けを求めるように、泣いていた。
今にも資材が崩れて自身を潰してしまいそうな状態だというのに。
(らしくない…)
それに誘われるように歩を進めれば、予想していた色が雲雀の視界を占めた。
あぁ、まるで、辺りを燃やし尽くす炎のような、色。
「…息は」
問えば、小刻みに震えていた肩が大きく揺れた。
「さっ、き…、…っ」
律儀にも返した言葉は続かない。
ひ、と高く鳴いた喉が、全てを物語る。
その、膝の上。
顔半分を火傷で被われた女の子の、小さな小さな、体。
痩せこけた下半身は資材の下敷きになり、真っ赤に染まって圧し潰されている。
───先程まで息があったことすら、奇跡にすら思えるほど、無惨な姿。
「橘」
··
震える手でそれを抱き締める彼女を、呼ぶ。
雲雀の言いたい言葉を予期してか、倫子は壊れた人形のように頭を横に振るだけだった。
「…いやだ、っ」
ぐつりと死体を握る手に力を込めると、呼応するように涙が落ちていく。
まるで硝子でできた壊れやすい生き物のように、かたかたと震えている。