AEVE ENDING




「テレパスで何度もあんたを呼んだのに、駄目なのよ。なにかに遮られてるみたいに届かないの」

アミが、何が何だかさっぱり、と肩を竦めた。

「それ、雲雀さんだろう」

男子生徒が間合いを詰めて倫子の腕を掴む。キモイ。

「雲雀さんが近くにいると、あの人の潜在能力に圧されてテレパスがうまく空気に流れないんだぜ」

あぁ、なるほど。
じゃあ、どうして私のテレパスがあいつに流れたんだ?
届かないテレパスは自然消滅するのが常だ。

大体、遮られるってんなら、私のテレパスが奴に流れるわけがない。


「あーん?」
「なに、心当たりがあんの?」

不可解ななにかに眉間に皺を寄せて唸った倫子に、アミがすかさずそちらを見た。

「なくはない」


―――その時だった。
油断した瞬間をつき、目の前の男子生徒が足元の砂を蹴り上げる。

「んがっ」

砂の塊が思い切り顔面に直撃した倫子が怯んだ隙に、男が倫子を押し倒す。
胸倉を殴られるように押されて、息が詰まった。


「…っ橘!」

アミが叫ぶ。が、そちらに視線を向けた倫子の目に映ったのは、二人の男に押さえつけられたアミの姿。

「っ……アミ!」

なんとか男の拘束から逃れようともがくが、砂に顔面を押さえつけられ力が抜ける。
細かい砂粒が頬に喰い込んで、口の中にも入ってくる。いってーよ。

そうこうする間にも、隣ではアミが男に跨がれていた。
あの男、殺す。

(…くっそ、あの野郎!助けも呼ぶ気なしかよ!)

万事休す。
思わず悪態を叫ぶと。


(―――心外。ひとりでなんとか出来るんじゃないの?)

鼓膜を揺るがす、平坦な声。

「はあ?」

突然流れてきたテレパスに思わず間抜けな声を出してしまった。
それに反応したのは、倫子を踏みにじる男子生徒だ。

「なに独り言喋ってんの?おら、お前は俺だよ」

シャツに手を掛けられ、焦る。

(冗談じゃない!)

有り得ない。
裸を見られるのは、困る。




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