AEVE ENDING






(ちょっと、東のクソ会長様!あんたんとこのバカが犯罪起こしてますけど!)
(なあに?なにしてるの?)

必死になってテレパスを送るが、返ってくるのは熱もなにもない冷ややかな声。

「暴行罪だっつの!わかってんだろが!マジなんとかしろよてめぇ!」

視えているくせに白々しい。
怒りのあまり思わず叫んだ倫子の頭を、男子生徒が更に強く押さえつけた。

(…失礼だね。口も悪いし)

溜め息とともにそう頭にテレパスが響いた瞬間、体がなにかに引っ張られるような感覚に陥った。


ぐん、と。

強力な磁力によって脳髄が引っ張られていく。
急激な環境の変化に、喉がひきつるような声を上げた。


「…っ!」



(う、ぇ…!気持ちわる…!)

体中の細胞が分解していくような感覚。
肉体を構成する全てが小さな小さな粒になり弾けてゆく。

視界が歪む。
意識が引っ張られる。

どんどん、私が小さくなっていく。



―――パンッ。








「……」

あれ。

顔に押しつけられた砂の感覚は変わらないのに、なんだか妙な視線を感じるのは何故だ。

「ぅ、わっ」

悲鳴とともに、腹部に掛かっていた男の体重が急になくなった。

「っ雲雀さん!」

…ひばりさんだぁ?
横になる私の頭上に影が掛かる。

視線を少し上げれば、黒い革靴の先が見えた。
その革靴から順に上へと辿っていけば、端正さが際立つ無表情と視線がかち合う。
こちらを見下すような眼が、これ以上ないというほど憎たらしい。

見れば周りには西部東部の生徒達がぐるりと円を巻いて、私達を見ている。

「…この、人でなし」

砂を噛んだまま睨み付けても、ちらとも表情を変えやしない。

「心外」

そして吐き出された淡白な一言。

……シネ。





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