AEVE ENDING






「…ねぇ」

その男に、反撃とばかりに言い捨てた。

「彼らは僕ではなく、橘を狙ってるよ」

そう言えば、不出来の笑みが僅かに強ばる。
間抜け。冷徹を装いきれない、憐れな道化。

「女に構う前に、少しは橘を構ってあげたら」

それに満足げに微笑した雲雀は、奥の部屋を一瞥して医務室を後にした。







「…鋭いこどもってやーね」

鼻白んだ奥田がそう呟くのと同時、雲雀が一瞥した自室からアミが素っ裸で現れた。

「おきゃくさん…?」

この部屋の物音で目が覚めたのだろう。
呂律の回らない口調でそう口にする。

「アーミ。風邪引くよ」

ペタペタと素足で歩くアミに手を伸ばす。
さやさやと靡く髪が、異様に眩しく見えた。


「あっためて」
「ハイハイ」

ゴロゴロと懐いてくる暖かな身体に苦笑して、奥田はその小さな体を遠慮がちに抱き締めた。

白衣に包まれた腕の中で、アミはそっと奥田を見上げる。
その眼は決して、そっと、などという言葉で表せるような柔らさではなかったが。


「…あっためたげる」
「ん?」
「また、泣きそうな顔してる」


たきおの泣き虫。



───彼女のその微笑みは、罪深い僕には似合わない。







< 363 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop