AEVE ENDING
「…ねぇ」
その男に、反撃とばかりに言い捨てた。
「彼らは僕ではなく、橘を狙ってるよ」
そう言えば、不出来の笑みが僅かに強ばる。
間抜け。冷徹を装いきれない、憐れな道化。
「女に構う前に、少しは橘を構ってあげたら」
それに満足げに微笑した雲雀は、奥の部屋を一瞥して医務室を後にした。
「…鋭いこどもってやーね」
鼻白んだ奥田がそう呟くのと同時、雲雀が一瞥した自室からアミが素っ裸で現れた。
「おきゃくさん…?」
この部屋の物音で目が覚めたのだろう。
呂律の回らない口調でそう口にする。
「アーミ。風邪引くよ」
ペタペタと素足で歩くアミに手を伸ばす。
さやさやと靡く髪が、異様に眩しく見えた。
「あっためて」
「ハイハイ」
ゴロゴロと懐いてくる暖かな身体に苦笑して、奥田はその小さな体を遠慮がちに抱き締めた。
白衣に包まれた腕の中で、アミはそっと奥田を見上げる。
その眼は決して、そっと、などという言葉で表せるような柔らさではなかったが。
「…あっためたげる」
「ん?」
「また、泣きそうな顔してる」
たきおの泣き虫。
───彼女のその微笑みは、罪深い僕には似合わない。