AEVE ENDING





「…な、な!誰がクソ女ですか!」
「あ、ごっめーん。頭の方も飛ばしちゃった。飛べばいいとか思ってたけど」

しらを切る倫子にますます顔を真っ赤にして、朝比奈が詰め寄ってきた。

怒った顔もかわいい。
こりゃあ奥田がキャッキャ言うわけだ。

「雲雀様にお手数をお掛けしていながらなんて恥知らずなの!先ずは雲雀様に礼を言うのが礼儀でしょう!」

怒鳴って、さあ謝れと言わんばかりに脇に避ける。
目の前には、人形みたいに美しい端正な顔。


「あぁ、礼、ね」

勿論、させてもらう。たっぷりね。

「…君、僕を殴る気満々だね」

容赦なく睨みつけてくる倫子を、狡猾な笑みを浮かべながら見返す。
その雲雀のよく通る声に、観衆がざわめいた。

(雲雀様になんて事を)
(命知らずにも程がある…)
(イヴのくせに、雲雀様とお言葉を交わすなんて)

外野がギャースカギャースカうっせーっつの。


「頭ん中、勝手に読むなよ」

観衆を無視して低く牽制すると、雲雀は吐息のような笑みを吐いた。

「君が勝手に流してくる」
「あんたの頭ん中も筒抜けなんだよボケ!」

すかさず噛みついた倫子の言葉に、雲雀は神妙な顔つきになった。
それでも、端正さは失われない。それがまたむかつく。

「まぁ…、なにを馬鹿な事を。貴女のようなイヴが思考を垂れ流しにすることはあっても、「修羅」である雲雀様の思考が貴女に流れるなど有り得ませんわ」

朝比奈がここぞとばかりに雲雀を持ち上げる。
観衆からも朝比奈に賛同する野次が次々と飛び交った。

いや、そりゃそうなんだけどさぁ、仕方ないじゃん。
流れてくるもんは流れてくるんだから。



「…ねぇ、君は本当にアダムなの?」

沈黙していた雲雀が、心底不思議そうに私に尋ねてきた。
その異質な言葉に、無責任な観衆達からざわめきが起こる。

「さっきから、まるで非アダムのように思考が全て流れてくる。それに、君の能力指数は滅茶苦茶だ」

首を傾げて、気だるい女性のようにしなやかな仕種で。


(―――私を突き刺す)



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