AEVE ENDING
じ、と首に纏わせた指に力を込めれば、橘が無意識に喘ぐ。
吐き出された熱い呼気が指の付け根を霞め、それに触発されて鳥肌が立った。
(なにを、考えてるいの…)
今、なにをしたいか、だなんてそんなこと、まさか。
―――僕の指数本で、橘は簡単に苦しむ。
眉間に寄せられた皺が、倫子の苦痛を如実に再現していた。
倫子が鳴く。
首を拘束したまま、雲雀は身を伏せた。
それはまるで、蜜に蝶が誘われるように。
「…っ、」
ぐ、と絞殺するように力を込めれば、倫子が酸素を求めて口を開ける。
垣間見えた赤く濡れた舌が、酸素を吸い込むように蠢いている。
「…、」
―――それを阻止するように、口付けた。
ここ数日、散々殴られ続けているせいか、触れた唇の端は歪に乱れ膨れていて。
(気付かなかった)
それを癒すように舐め上げれば、倫子はむずがって身を捩る。
「…っ、」
また、倫子が鳴く。
それを押さえ込む。
眠ったままの身体が、無意識に抵抗した。
臆する舌に噛みついて深追いして、緩く浅く、繋がってゆく。
───ただ、その繰り返し。
「っ、…」
倫子の息が荒くなる。
逃げる舌を絡めながら薄目を開ければ、睡眠を妨害されて明らかに不機嫌な寝顔を確認できた。
(…これ、寝込みを襲ってるってことだよね?)
知らなかった。
(僕って悪趣味…)
「…ふ、」
倫子の呼吸が雲雀の咥内に吐き出され、熱いそれが喉奥を突いて背筋が凍り付いた。
(…たまんない)
意識のない女を無理矢理に掻き抱いて、ただひたすら、己の欲を吐き棄てようとする。
相手の意思など感知しない、必要ともしない。
まるでケダモノ。
(馬鹿馬鹿しい…)
くつりと唾液が鳴れば、雲雀は我に返ったように顔を上げた。
そうして小さく、息を吐く。
酸素が不足して、目眩。
倫子は暴行から解き放たれて、安心したように規則正しい呼吸を取り戻していた。
無意識に貪ったその唇は赤く腫れ、唾液に濡れ、酷く。
(女臭い…)
意識がある時の橘とは大違いだ。
(だからだ、絶対…)
そうでなくては、自分がこんな芋のような女に欲情する理由が見つからない。
(睡眠不足で頭がイカれてたのかも。そうじゃなきゃ…)
―――どうして、こんな。