AEVE ENDING
―――それは、深い闇を思わせた。
「双子に続き、まさか君まで逃げ帰ってくるとはな」
男が嗤う。
失態を咎める言葉ではなかった。
「申し訳ありません。まさか、修羅自身が妨害に出るとは思わなかったもので」
蛇の入墨をした男はそう答えた後、ゆっくりと頭を垂れた。
それはまるで、神に赦しを乞うように。
「───そうだな。問題は、アレが神の目に叶ってしまったことだ」
革張りのソファに座る男は、まるで抑揚のない土地のように低く口を開く。
逃げ帰った双子は部屋の隅に集まり、すぅすぅと寝息を立てていた。
「まさか神が、あのようなレプリカに心を許すとは思いませんでした故」
───雲雀。
あの玲瓏で麗しい神の、御心に滲みる者。
「引き離すべきだと思うか」
男がくつくつと嗤う。
ただ、くつくつと。
まるで人形のように。
「…もう少し日を見て待つのも一興かと」
進言すれば、主がその肩を揺らした。
「奪うか」
嗤う。
くつりくつり、珍しく酷く高揚しているらしい。
「人聞きの悪い」
入墨の男は主の心象を思い、その薄い唇に笑みを乗せた。
くつりくつり。
男は嗤う。
「…あの美しい顔が歪むなら、待つのも悪くない」
───あの美しい神の、大切な大切な林檎の実を。