AEVE ENDING







「皆さんに、残念なお知らせがありまーす」

東部、西部箱舟のアダムが全員集められたのは、合同セクションの開始時でも使用された多目的ホール。

セクションが組まれて数日。
それなりに気心が知れたそれぞれパートナーと並び合う、約百組のペア達を前にして、壇上に立つ奥田がそう切り出した。


(見てよ、雲雀さまの横)
(イヴのくせに偉そう)
(あの能なしが雲雀さんのパートナーだなんて、未だに納得いかねぇよ)

生徒達が騒ぐのは、緊急収集がかけられたからではない。
話題の中心に居るのは、雲雀と倫子だった。

(…うるさい)

先程から故意に飛ばされる悪質なテレパス。
倫子の機嫌は最悪だった。


(雲雀さまが可哀想だわ)
(奥田先生も奥田先生だよ。いくら采配で結果が出たからって、あんな無能を修羅のパートナーにするなんて…)

ただ吼えるだけの人間には言われたくない。
隣に立つ雲雀は、聞こえていないのか無視しているのか、いつもの秀麗な無表情で佇んでいる。

その端正な横顔の向こう側には、武藤と朝比奈のペアが立っていた。
雲雀の熱狂的片想い主義である朝比奈はしかし、やはり西部箱舟の生徒代表である。
ただ静かに、奥田の話に耳を傾けていた。

(…なんか、ちょっと落ち着いたみたいだなぁ)

一瞥した朝比奈の横顔は、以前より大人びて見える。
隣に立つ武藤と幾つか言葉を交わす様子を見る限り、あのペアの采配は絶妙だったらしい。

(…良いな、仲良さげで)

他の生徒からすれば贅沢な呟きだとは承知の上なのだが。
しかし寄って集まり談笑を交わすペア達を見ると、この口数の少ない男が恨めしい。

雲雀を一瞥。
やはりこれといった表情もなく、ただ壇上を見据えているだけだ。

(いや、フレンドリーにされても困るんだけどさ)

だって。



(…実は友情に餓えてるんだね)

そんな事を考えていると、横に立つ雲雀からテレパスが流れてきた。

(…別に、そういうわけじゃない)
(寂しいなら構ってあげるよ。…死ぬ気で)
(…構うの意味、間違ってませんか)
(いっぱい鳴いてね)
(なに勝手に話進めてんの?鳴かねっつの)

…あれ、これなんか仲良さげじゃね。




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