AEVE ENDING




「…というわけで、数日のセクション予定がオジャンになっちゃったから」

奥田が咥えているだけの煙草をだらだらと揺らす。
その仕種を合図にして、ざわつく生徒達がゆっくりと波紋が広がるように静かになった。

(…さすが精神系サイコキネシス、第一人者)

静まった周囲に、倫子は珍しく奥田を褒めた。

アダム特有の脳波に波長を合わせた実音のない音波に似せたテレパスを発して、脳の活動を鎮め、主導権を握り操作する───つまり、不特定多数の人間の思考を一瞬だけ停止させ、黙らせることが可能になるわけだ。

(操作系は、奥田がピカイチだな)

とはいっても、根っからのものぐさ太郎奥田は滅多にその能力を使わない。

(研究当時はよく使ってたけど)

麻酔の効かなくなったこの体を開くために脳を洗脳され、昏々と眠らされたことを思い出す。

恨んではいなかった。
寧ろそれで、死にもがくような痛みを多少は緩和できたのだから。


「仕方ねーから、今日からこの西部箱舟での実践訓練を実施しまーす」

奥田の声が静かなホールに反響した。
球体天井のスケルトンの向こう側には、酷く憂鬱な雲が流れている。

「各ペアでそれぞれ今から分けられるクラスに移動。引率はミスレイダーと東部の梶本センセーと原センセーがするから」

だから無駄口叩かないで迅速に行動してくださいねーはい、じゃあそのままちょっと待っててー。

奥田の言葉と同時、先に挙げられたミスレイダーと梶本が、整列しているアダム達をちゃきちゃきと区分けし始める

運の悪いことに、倫子と雲雀は梶本のクラスに区分けされた。

明らかな策略である。




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