AEVE ENDING
「落ちこぼれ如きが我が校の修羅に影響を及ぼすとは思えんが、念のためだ」
だからなんだ。
監視でもするってかこの豚野郎。
梶本は慇懃な笑みを浮かべると、自分が受け持つ生徒を連れてホールを後にした。
(…あ、武藤と朝比奈も一緒だ)
目が合う。
朝比奈は鼻を鳴らして倫子から視線を外し、武藤はそんな朝比奈に構い通し、こちらを見ようともしない。
(わかりやすいやつら。…見てほしいわけでもないけど)
武藤は苦手だった。
倫子をイヴとして毛嫌いしているわけでもなさそうなのに、あからさまに侮辱する。
別に個人的に恨みを買った記憶もないので、一体全体、武藤がなにを考えているのか想像もつかなかった。
そして問題は彼らだけではない。
周囲のペア達は、雲雀と同じクラスになれたことに有頂天になり完全に浮かれている。
こうなるとやはり風あたりが強くなるのは倫子であって、巡るめく陰口に当て付け、理不尽な暴力達。
(あぁ、いやだ…)
考えて頭が痛くなった。
隣を歩くパートナーは、それらの原因だというのにアテにならないし、寧ろ一番の脅威が奴なのだ。
(考えても仕方ないけど)
こうなれば、荒波に身を委ねるしかない。
辿り着いたのは、巨大な西部箱舟の海岸側に位置する運動専用のホールだった。
つまり梶本は精神系アダムではないという事だ。
まぁ、見た通りムキムキマッチョで、精神系アダム特有の繊細な精神を持ち合わせているようには到底見えないのだが。
「いいか、よく聞くんだ。このクラスで学ぶのは、テレパスのような精神系サイコキネシスではない。念力だ!」
ホールの前に立つ梶本が前置きもなく講義を始める。
男の拳大の石を砂に分解して見せたり、能力を使って数十メートル高の天井間際まで跳躍してみせる。
身体能力に直接影響を及ぼすサイコキネシス。
どんな運動音痴でも能力の使いようによってはとんでもない身体能力を手にすることができる。
ただ殴るだけに止まらず、そうして繰り出す拳に空気圧を掛ければ、生物の頭など簡単に吹き飛ばせるわけだ。
勿論、防御する際にサイコキネシスをうまく使えば、脳味噌をぶちまけずに済む。
ただ、精神系アダムにとっては苦手な科目だと言えよう。