AEVE ENDING
(…いや、私はどっちも苦手なんだけどさ)
アダムは大きく振り分けると、念力系と精神系のふたつに分類される。
要するに得手不得手、向き不向きというわけだが、これがなかなか曲者なのだ。
それぞれの能力色に合わせたその差は、実に顕著に現れる。
念力精神がバランスを保った両刀のアダムは寧ろ珍しい。
「なぜ念力を学ぶ必要があるか、朝比奈、答えてみろ」
梶本が朝比奈を指名する。
タイムロスを嫌っての指名だろう。
「我々アダムの最終目的は環境整備です。そのためにはまだ人の手の及ばない危険な地へ赴く事もあります。―――勿論、人が入り込めないからこそ我々アダムが派遣されるわけではありますが。その場合、安全性、開発性ともに念力を自在に操れるスキルが必要になるからですわ」
朝比奈が答える。
模範的、さすが。
梶本は朝比奈の回答に至極満足げに頷いた。
そして次には、その隣でぼけっと突っ立っている武藤を呼ぶ。
「今から俺と武藤で組み手をとる。よく見ていろ」
そう言うと、武藤と梶本は前に進み出て、向かい合う形で一礼すると両手を合わせた。
要するに、いただきますの手。
「へぇ…、琉球空手だね」
隣の雲雀が感心したように呟く。
「でも、沖縄は沈んじゃったじゃん」
私達がまだ産まれてもいない頃、地殻変動により沖縄は海底へと沈んでしまった。
今でも語り継がれるほどの美しい土地だったと聞く。
「だからって、琉球民族の生き残りがいないわけじゃないよ」
それはそうだ。
そんな話をしていると、武藤と梶本が動いた。
武藤が梶本の間合いに詰め寄り、そのまま正拳を突き出す。その正拳を左手で流した梶本は、左脚で武藤の横っ腹を蹴り上げた。
見事にヒットしたが、鈍い音のわりにさしてダメージは受けていない。
能力でうまく防御した証だ。
それでもバランスを崩した武藤は、そのまま体勢を整えることもせずに床に倒れ込み、梶本の足首に掴みかかる。
真上に引けば、梶本が仰向いた。
しかし梶本は倒れない。
本来ならば有り得ない体勢で静止したまま、真下の武藤の顔めがけて、振り解いた右脚を振り上げた。