AEVE ENDING
「各ペア、それぞれ五メートル以上の間隔を空けろ。覚悟が決まったら勝手に始めればいい」
その言葉に乗り気ではなくとも、ひとまずは従う生徒達。
約四十組ほどのペアが四方間隔五メートルを空けて散るが、ホールにはまだまだ空きがあるほどだ。
(ちょっと、嘘でしょ…)
その場に固まったままの倫子は、雲雀を一瞥する。
(このサディストと組み手しろってか)
抹殺される。
雲雀は不機嫌そうに眉を寄せたまま、動こうとしない。
おおかた面倒だとでも考えているのだろう。
(待て待て待て…)
仮に雲雀がやる気を出したとして、私に勝ち目はあるか?
パチパパチパチチパチ……計算中。
そういえば、片手で首を絞められ体が浮いたことがある――馬鹿力。
隙を突いたのも含め蹴りを繰り出して当たった試しがない――瞬発力と勘。
何度か殴られたが半端なく痛い――拳。
チーン!
「………………………………………………………………………………………………………………………、むり。」
勝ち目がまるでない。
(まるでないってゆーか、組み合わせること自体、無謀ってゆーか…)
ブツブツと悩んでいる倫子を雲雀がちらりと一瞥する。
「さっきから情けない声ばっかり。弱虫」
冷ややかな声が、じんと耳を打つ。
「落ちこぼれっていうより、腰抜けって呼ばれた方がマシなんじゃない?」
身の毛も凍る雲雀の一瞥を、倫子は果敢にも睨み返した。
「君みたいな腑抜け、願い下げだ」
そして切り棄てられる。
その言葉に、倫子が震えた。
(こな、くそ…!)
「ふざけんなよこのクソスズメ!誰がお前なんかに負けるか!」
怒鳴り返す。
両眉をこれでもかと釣り上げ、親の仇と言わんばかりに睨めつけた。
完全に牙を剥いたその姿に、雲雀は満足げに目を細めて見せる。
―――そう、その眼だよ。
僕を殺そうとする、どこまでも野蛮な眼。
(その眼しか、要らない)