AEVE ENDING
「…力業だけじゃなくて、アダムの力も使いなよ」
雲雀の一言に顔を上げる。
ならば思い切って、やるしかない。
「…、」
バチッ。
───途端、雲雀が掴んでいた倫子の右脚が爆発した。
不意を突いたその攻撃だったが、雲雀は冷静に手を離す。
倫子はその隙に雲雀から離れ、距離を置いた。
爆発した、という表現を使いはしたが、実際には右脚の捕らえられた部分にだけ微弱な静電気を発生させただけである。
しかし、さすが落ちこぼれ倫子。
微弱な静電気のつもりが、許容以上の電流を発生させてしまった。
「いってぇ…」
つまりパチリと電気が走る程度で収まる筈が、雲雀の手にも自らの右脚にも怪我を負わせてしまったのだ。
「雲雀、ごめん」
見れば、雲雀の左掌はまだピリピリ痺れているらしい。しかも皮膚が焦げたのか、黒く煤けていた。
(こ、殺される…)
倫子、地獄の縁を見る。
しかし雲雀から返ってきた言葉は、予想外のものだった。
「…うん、その調子。おいで」
―――え。
「いい、の…?」
その麗しの手に傷を負わせたのだ。
本人が気にしなくとも、こちらは気に病んでしまう。
(…雲雀が綺麗なのは、嫌いじゃないし)
「なに言ってるの?殺す気できなよ。そうじゃなきゃ、相手にしてあげないよ」
雲雀が無表情に言い捨てる。
有り難い言葉だが、倫子は素直に喜べなかった。
「それはつまり、あんたも私を殺す気でくるってゆー…」
「当たり前でしょ。ぼんやりしてたら死ぬよ。というか、殺す」
黒曜に輝く雲雀の目が、にぃと細まった。
その長い睫毛に彩られた眼に殺意を見出し、倫子は心底から雲雀のパートナーである自分を呪う。
(どんだけデンジャラスな授業だよ…)
しかしながら、雲雀の不意を突いて奴に傷を負わせたことは、ちょっと自分有望なんじゃないか?と思ってしまう。
だってあの雲雀に、だ。