AEVE ENDING
「そうだよ、倫子。俺も雲雀くんもいるから、怖がらなくていいよー」
奥田が間抜けな声を出す。
(ち、がう…?)
それを聞いて、倫子が震える思考で雲雀に問いかけてきた。
「なに?」
わけが解らず問い掛ければ、倫子がく、と首を仰け反らせる。
(研究所、じゃ、ない)
―――あぁ、何故。
(…違う。大丈夫だから、もう少し我慢しなよ)
倫子が深く息を吐く。
安堵したように、小さく。
眉間に皺を寄せたまま、相変わらず辛そうではあるが。
シーツを握り込む手が不意に浮き、雲雀のシャツを握った。
耐えるように、縋るように。
「…っ、ぁ、い゛」
憐れだ。
心臓の真下の、酷く深い位置が疼く。
(これは、なに?)
倫子の肩が震える。
縫合の進みを見れば、もう終わるだろうというところまで来ている。
「終わるよ、橘」
なにを、励ますような言葉なんか吐いて。
この僕が。
(…ありえない)
あぁ、けれど。
目下で木偶に縋りつく憐れな女が、あまりにも。
「…っ、」
声に鳴らない悲鳴を上げた。
痛みに冷や汗を掻いて、ボロボロになって。
(───あぁ、こんな襤褸雑巾みたいな体で)
ひたすら耐えて、きたのだ。
「雲雀くん、押さえて」
その瞬間、痙攣するように跳ねた小さな体を抱きすくめるように押さえこむ。
心臓を突き合わせて、トクトクと素早く響く心音に、雲雀は心地良ささえ感じた。
(生きてる……)
「ひ、ぃぁ、ぁ…!」
この悲鳴も震えも、全部。
(いつか、殺すなら)
散々鳴かせて、死なせてやらなきゃ。