AEVE ENDING
「君に体を壊されて、それでも倫子は、君に、救われていたのかもなぁ」
なにがそうさせるか、奥田にもわからなかった。
「だからこそ会いたかった。けれど、憎んでもいる。だからこそ、会いたくもなかった」
君に由縁ある人物に目を付けられなきゃ、人間として家族と幸せになれたんだから。
あんな身を裂かれるような痛みを、味わうこともなく。
(―――彼はまだ、知らない)
「…君は、倫子をどうするのだろうね」
奥田は緩慢に立ち上がり、投げやりに吐き捨てた。
既に倫子の賽は奥田の手から離れ、神の手中に在る。
采配を下すのは奥田ではなく、雲雀に委ねられていた。
雲雀にしてみれば、ただの押し付けにしかならないのだが。
「橘は、」
雲雀が浅く息を吐く。
(───だって、)
ベッドの上で眠る女は、同情を引くにも語るにも、あまりにも憐れで痛々しい。
「他人に賽を振られることを、望んでいない」
··
あれは、操り人形にはならない。
傷付いた憐れな無能の生き物。
けれどそこには、確かな意志がある。
(…どちらでもいいんだ、結局は)
僕を憎んでいようがいまいが、橘の気持ちなどこちらには関係ない。
考える脳を持っているのだ、過去に生きるか今に生きるか、結果にはいつか行き着く。
「───橘を手繰れるのは、橘だけだよ」
だから自らに任せるほかない。
(女の体を傷で飾って泥水を啜り痛みに耐えて憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで、―――僕を殺せばいい)
それを望んでいる、僕は。