AEVE ENDING
(…やべぇ、明らかに人口密度が減ってきてる)
采配が始まってかれこれ二時間半近く経っていた。
鶴の声ならぬ奥田の声で、テキパキとペアが組まれていく中、二百一名揃っていた生徒は、既に半分を切っている。
ちなみにアミは開始十分でペアを発表され、既にホールから新しい部屋へと移動した。
彼女のパートナーは同じクラスの女の子だった。
(…なんとなく奥田の作為が感じられるのは、何故だ)
けれど確かに、クラスメートが相手なら無難だろう。
こちらを敵対視している他校とパートナーを組むより、同校のアダムと組む方が精神的にも楽だ。
(…でも私、アミ以外に友達いないし)
なにより、イヴとパートナーを組みたがる者は皆無だろうから、結局のところ倫子には不利だ。
そしていつまで経っても名前を呼ばれない。
自分を無視して着々と進められていく采配にうんざりしはじめて、つい天を仰いだ。
重苦しい鈍色の雲が、強い潮風に煽られ、そのスピードを早くする。
(…あーあ、雨降るかなぁ。降られたら困るんだけどなぁ。洗濯物、おもっくそ外に干してきちゃったよ)
居住区が海と隣接しているため、この辺りでは日常的に風が強い。
そのうえ潮の臭いが強いので、洗濯物を外干しするとどうしてもしょっぱくなる。
(でも、乾燥機では乾かしたくないんだよなあ。潮臭くはないけど、生乾きのいやな臭いがする。まあ、曇りばっかだけど)
自然風で乾かすのと人工風とじゃ、色んな意味で違う。
世界が荒廃して、地球では青空なんて滅多に拝めなくなった。そのため土は肥えず、植物は育たない。
太陽光の不足と地下水の汚染により、痩せ細った野草くらいしか生えないのだ。
自分が幼い頃ですら、太陽を拝めたのは数えるほどもない。
(…遺伝子改良の植物なら、街に溢れてるけど)
もともと田舎出身なので、人工的な不自然に溢れた街には未だ慣れない。
その造られた植物にも、空気にも、だ。