AEVE ENDING





「ひばりぃ!逢いたかったぁあああ!」

しかしすかさず、箸で鼻をぶっすりと突き刺される。

「ぶほがぁぁああっ」

言わずもがな騒がしい。
なんて耳障りな。

手元の紅茶は天井の灰塵まみれになっているし、周囲の生徒たちは何事かと目を丸くしている。

(…面倒だな、)

雲雀は人知れず、苦労しきった溜め息を吐いた。


「イッテー。相変わらずつれねーなぁ、雲雀」

赤くなった鼻を抑えながら、真醍がにかりと笑う。

相変わらずだ。
本当に何もかも変わっていない―――数週間であの濃すぎる人格が変わっていても困るのだが。

「…僕の質問に答える前に、下でへばってる馬鹿を起こして」

雲雀の言葉に、真醍は素直に床でダウンしている倫子を抱き上げた。

横抱きならば確実に雲雀の不興を買っていただろうが、そこは真醍。
さすがと言うべきか、俵担ぎである。


「おう、橘。久しぶりだべな」

白目を剥いている倫子に対し、笑顔で溌剌に挨拶をする。
同時に覚醒を促すように頭を殴った。

倫子という少女は明らかにサンドバッグ化してきているらしい。憐れなものである。


「…っ!?…ってぇ、このクソザル!」

はっと黒目を見せた倫子がすかさず真醍の顎にアッパーを掛ける。
それをもろに喰らって反撃する真醍。

(話が進まない…)

馬鹿が揃うと苦労するのは必然的に常識人だ。
雲雀が常識人というあたりはもう、倫子にしてみれば失笑ものであるが。



「橘、真醍」

仕方なしに呼び掛ければ、二人は雲雀の呼び掛けに素直にじゃれ合いをやめた。

しかし、二人揃ってステレオ効果で騒がしかったため、二人が口を閉じた途端、食堂にいやな沈黙が流れる。

騒いでいた二人も、あまりの気まずさに肩を竦めた。

馬鹿すぎて溜め息しか出ない。


「場所を変えよう」

明らかに不機嫌になっている雲雀に、馬鹿ふたりは従うしかなかった。

ただでさえ目立つ真醍に、ここでは神と崇められる雲雀、落ちこぼれアダムの倫子。

普段から視線を集めているくせに、あからさまに見られると機嫌が悪くなる雲雀には堪えられない状況だった。

意外と繊細…、そう呟いた真醍が殴られた。





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