AEVE ENDING
「…お」
二人の後を追う途中、朝比奈と武藤のペアを見かけた。
あちらもふたり仲良くぎゃあぎゃあ騒ぎながら、倫子達の歩く回廊とは直角に交わる回廊を歩いている。
(…あっちもこっちも仲がよろしくて、いいね)
少し、羨ましい気もする。
心に隠すことも疚しいことも持っていないからこそ、真正面からぶつかっていけるのだ。
(たまに戸惑う…。アミに触ることにだって、迷うのに)
薬品漬けの汚いふやけた皮膚の下。
腐った血肉を隠して、誤魔化して、秘密を孕んでいる。
けれど。
(…隠し通したいわけじゃないんだ、きっと)
―――本音は。
「…橘、」
唐突に耳に入り込んだ雲雀の声に、考えに耽って立ち止まっていたことに気付いた。
顔を上げれば、雲雀と真醍がこちらを振り向きつつ、倫子を待っていてくれる。
憧れの場所に、倫子を手招きしてくれる、ふたり。
「…、うん」
今は、これでいい。
隠し事ばかりの私を、気に掛けてくれる人がいるのだ。
それなら、今はこれでいい。
「たちばな~ん」
真醍が間抜けな声でこの名を呼び、その隣で雲雀が気持ち悪いと悪態をついている。
「……ははっ」
少し、救われた。