AEVE ENDING
「…さてと、遠路遙々来ていただいた真醍くんには悪いけど、一先ず話だけでも聞いてもらおうかな」
足を組んで、唇に咥えていた煙草を胸ポケットに放る。
真面目な話をする時の、奥田なりの心構えだ。
「まずはじめに、俺が真醍くんを西部箱舟に呼んだのは闇組織の動きに変化があったからでね」
その言葉に、倫子以外はさして反応はしない。
「…探れたの?」
奥田は精神系サイコキネシスのアダムだ。
彼の力を持ってすれば、広い海に流されてしまった人間すら簡単に見つけることができる。
―――まさか、闇組織の根源の居場所を感知できたのだろうか。
それならばこちらには都合がいいが、しかしそんな簡単にボロを出すわけもない。
探るように見る倫子の目を、奥田は微笑でかわした。
(…やっぱり、相変わらずの出来損ないだ)
「いいや。ちょっとした事件が各地で起こっててね。明らかに尋常じゃないんで、都以外の国民達はパニックに陥ってる」
奥田の言葉に、倫子は再び首を傾げるはめになった。
「…騒ぎってなに?そんな話、箱舟には流れてきてない」
ある意味、閉鎖された収容所ではあるが、それほどの事件が起きているならなにかしらの情報が入ってくる筈だ。
しかし各地で起こっている事件の話など、微塵も流れてはこない。
「その件の情報が、お前達アダム候補生に流れるのを箱舟連盟は全力で阻止してるからね」
なんだそれ。
そんな秘密裏にしなくてはならない件なのか。
(全国で起こっているっていうのに?)
更に奥田に詰め寄ろうとした倫子を、雲雀の静かな声が不意に阻んだ。
「…人間狩り」
澄んだ声が吐き出したそれは、決して穏やかとはいえない。
にんげんがり。
口の中で反芻すれば、以前、自分も口にしたことがある単語だと気付く。
「一度に発見される死体の数が尋常じゃない上、しかも遺体の損傷が大凡、人間によるものだと思えない」
つらつらと語る雲雀に、倫子も奥田も、意図は違えど同じように目を丸くした。
なに言ってんの、こいつ。
どうして―――。