AEVE ENDING
(くらい)
(暗い…)
(くら、…)
―――不意に瞼が上がる。
まるで、沈没していた気泡が波に促されて浮上するように。
(だめだ)
気泡は、海面に出れば消えてしまうのに。
(……、だめ)
意識が形になる。
時間を掛けずに、それは。
「ぃ、…っ」
声にならない悲鳴が聞こえた。
それが自分のものだと、認識する間もなく。
右肩から全面、乳房を通り抜け心臓を経由し、左足首にかけて線のように走る傾斜する激痛。
まっぷたつに、引き裂かれそうだ。
「…っ…、っ」
血と唾液、汗に濡れたシーツが剥き出しの肌に気持ち悪い。
身に付けていた衣服は、とうの昔に脱ぎ捨てた。
直接肌にまとわりつく温い不快感が体を走る激痛を助長させてゆく。
「 」
音にならない言葉が耳を裂いて、助けを求めたのか耐えたのか、自分でもわからなかった。
真醍が島へと一時帰国してすぐ。
早朝に訪れたこの不愉快な痛みと嘔吐感、吐血。
(留学生のやつ…、こんな馬鹿でかい力を剥き出しにしやがって、)
寧ろ意図的だと、弱った頭は考えてしまう。
(…、雲雀は、いつも抑えていたのか)
だからこそ、あれだけ触れ合っても、頭痛程度の痛みしか感じなかった。
(……あれだけ触れ合っても、って)
呼吸することすら厭う痛みの合間、今や淡い記憶となった雲雀の顔を思い出す。