AEVE ENDING
(なんで、あんなことしたの、雲雀)
まるで息を止めるような、あんなキスをして、掻き抱いて、心酔する。
普段、全くといっていいほど崩れない雲雀の瞼の裏が、私しか映さない。
―――陶酔、していた。
あの静かな湖面に、私みたいなちんけな蟲が、波紋を広げる。
(そのことに、陶酔しきっていたのかもしれな、)
「…っぃ、」
再びせりあがる苦痛に舌を噛む。
ぞわぞわと途切れることなく湧き上がる、細胞を引き裂くような痛みが脳髄に響き渡っていた。
「…ハ、っ」
痛みを誤魔化すように、雲雀のことを考えていた自分が馬鹿らしくなる。
(な、に考えてんだ、馬鹿)
もう今更、なにを悔いるのか。
なにを、今更。
「望むな…!」
この、本来なら感じなくていい痛みも、まるで病むように侵害する傷みも、すべて。
(あいつは、私が望んでいい相手じゃない)
あの男は、私が。
恨むべき、詰るべき、相手だ。
「くっ、ふ…」
縋っていい相手じゃない。
それなのに。
「…ぃ、」
(頼むから、)
縋るなよ。
この下らない虚しさも、縋って詰られる傷みも、なにもかも。
あの男に左右されてばかりでは、いたくない。
あぁ、それなのに。
苦しい。
(あいたい、)
―――雲雀。