AEVE ENDING
「奥田…?」
沈黙が訪れても、倫子が呼びかけても、それでも奥田は口を開かなかった。
「奥田先生、時間が推してますので…」
再び梶本から催促が飛ぶ。
(こんな力も気品もない生徒に時間を掛けてどうする気だ。まだ我が校の「修羅」が残っているというのに)
催促と同時に飛んできた不愉快極まりないテレパス。
(…わざと飛ばしやがって)
なんだってこんな不当な扱いを受けなきゃならないのか。
(「修羅」がなんだってんだ、このホモ教師)
「な……っ!」
苛立ちのままわざと悪意に満ちたテレパスを送ってやれば、ニヤニヤと笑みを湛えていた梶本の顔が真っ赤になる。ざまあみろ。
そんな険悪な空気を醸し出している倫子と梶本をただ無感情に眺めながら、雲雀は呆れていた。
(馬鹿だね)
わざわざ教師に喧嘩を売ってどうする気なのか。
いや、先に売ったのは梶本かもしれないが、所詮、落ちこぼれが教師に楯突いたところで勝てる見込みなどゼロだというのに。
(…無謀だよ)
囁くように届いた雲雀のテレパスに、倫子は律儀に反応する。
(うるさい。あんたには関係ない)
本当によく噛みつく。
雲雀を前にすれば、大抵のアダムはその存在感を前に縮み上がるというのに。
(この僕にそんな口きいて、ただで済むと思ってるの?)
僕は無礼者を野放しにするほど優しくないよ?
あくまで上目線で倫子に言い放つと、倫子はわざわざ振り向いて雲雀を睨み付けてきた。