AEVE ENDING
「ムコウ?」
「君の国、で」
つまり考えると。
『どうして力を抑えないの?』
なにを今更。
今までなんの弊害もなかったというのに。
「必要?」
何故、突然そんなことを言い出したのか。
鍾鬼が不思議そうに雲雀を見れば、雲雀は不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「僕の言うことが、聞けない?」
大した唯我独尊ぶりである。
鍾鬼は思わず呆れてしまったが、実力の差は明らか。
素直に従ったほうが身のためだ。
なにせ、ここは母国ではないし、多少の謙虚さと服従精神は、持ち合わせていなくては。
「…、これでいいか」
特に意識もせず集中すれば、剥き出しだった力の大半は抑えられる。
膨大な力を所有した者の性に近い。
巨大過ぎる力を露わにしていれば、大切なものすら傷付けかねないからだ。
それでも鍾鬼が力を解放させていたのは、傷付けて困るようなものを持ち得てなかったからに過ぎない。
「…うん、いいよ」
だいぶ抑え込まれた鍾鬼の気配に、雲雀は満足げに口許を歪める。
そのまま部屋を出ていこうとするので、訳もわからず従わされた鍾鬼は訝しげな顔を浮かべた。
「雲雀、エリアは」
忘れていたが、例の貧困エリアへと収集がかかっている。
「…先に行ってて」
しかし自身を引き止めた鍾鬼を残し、慇懃な神は部屋からするりと出て行ってしまった。
その細い気配を辿りながら消えた姿を思い返し、鍾鬼はその玲瓏な顔から表情を消した。
「タチバナ…?」
その名を呼ぶ声は、穏やかな風のようで。