AEVE ENDING
貧困エリアでのセクションが開始され、半日が経過していた。
小雨が地上を哀れむ中、未発見の死体を掘り出す仕事に黙々と取り組んでいたアダム達の群れが騒然となった。
遅れて登場した修羅──―雲雀の姿に、ではない。
「あいつは…」
その隣を歩く、倫子の姿に、だ。
「ちょっと、死んだんじゃなかったの?」
「追放されたんだろ」
倫子が部屋に籠もっていた間、まことしやかに悪質な噂が発生していたらしい。
もとより爪弾き者である。
落ちこぼれながら修羅のパートナーになり得た倫子に、他のアダム達は羨望の眼差しを向けていた。
羨望のみならず、ではあったが。
「雲雀様のパートナーを外されたっていうのに、何様?」
しめやかに広がる卑屈な陰口に、倫子はいつも通りの顔で眉を顰めた。
「相変わらずだなー」
吐き捨てた倫子の足取りはゆるりと雲雀から離れ、人垣の向こうに見えたアミへと向かう。
(ありがと、雲雀)
別れ際、倫子が離れていくことになんの興味も示さなかった雲雀へとテレパスが送られてきた。
雲雀はそれに答えることなく、歩を進めていく。
その後ろ姿すら相変わらずで、倫子は前を向いたまま小さく笑った。
―――そして数秒後、アミの歓喜の叫びが辺りに響き渡ったのだった。