AEVE ENDING
───ない。
確かに見逃しはないらしい。
鍾鬼の言葉通り、このエリア内に遺体は存在しない。
(何故、こんなに)
少ないのか。
あれだけ盛大に破壊し尽くされたこの生活領域で、しかも資材置き場が多々あった場所で行方知れずだった人間が、たったの八体。
(…人間達の手によって掘り返された分があるのか──、あぁ、それでも)
おかしくはないか。
酷く冷とした風が頬を舐めた。
見上げた空は淡く白く灰染まり、気が重い。
(引っかかる…)
なにか合点するものはないか、或いは。
―――闇組織。
(各地で勃発する人間虐殺)
(…傀儡使い)
―――傀儡。
そう考えれば、合点がいく。
本能にストッパーを組み込まれたアダムより、無防備な人間を操るほうが比較的単純な作業で済むだろう。
(傀儡…生きた人間ではなく、死体…ネクロマンサーか)
目的はなんなのか。
「…、」
不意に浮上した間抜け顔に、嫌気が刺す。
(彼らが求めるのは、)
「…タチバナって、誰」
不意に掛けられた声に、思考を中断させた。
「タチバナは、雲雀の、なに?」
鍾鬼はまるで赤ん坊のような眼でこちらを見ていた。
なんの画策も思惑もない、純粋な眼で。
(…なんなの、いきなり)
「君には関係ない」
一体、なんなのだ。
誰も彼もが、橘橘橘橘橘。
(鍾鬼に関しては、僕が起因だけど)
あぁ、けれど。
求めている。
(憐れな女に、神を見透かして)
───それは、まるで。