AEVE ENDING






「あんた、一体なにしてたのよ」

開口一番。
倫子の頬へきっちり平手を喰らわせてから、アミはそう口にした。

心配したのだと、言外に言い含められ睨みつけられる。
その迫力に圧されながらも、倫子は込み上げる嬉しさを隠しきれずに笑った。


(…笑うしかないじゃないか)




「風邪ひいてぶっ倒れてた」

うまい言い訳など見つからなかった。

仕方ない。
疑いながらも信じてくれ、友よ。

「かぜぇ?」

そう言った倫子をあからさまに疑う友人に、やはり苦笑が漏れた。
迷惑を掛けたと、申し開きも立たないけれど。


「ごめん。マジ辛くて、一日中、寝て過ごしてた」

嘘の延長で誤魔化したりしてごめん、アミ。

(…通じないのはもとよりだけど)



「本当に、風邪なの?」

アミが鼻をひくつかせる。

(あ、血の匂いがするかも)

瘡蓋が被っていた腕の傷を、もがき苦しみながら掻き毟ったのだ。
当然傷は開いたし、更に悪化している。

(瘡蓋、剥がれてぐちゃぐちゃだし。風呂で流れたと思ったんだけどな)

まぁ、仕方ないか。
血液は胎内の詰め物だ。



「血の匂いがするけど…」

ほらーやっぱきたー。
鋭くなったアミの眼光に、倫子は冷や汗を掻いて後退る。

「あー、うん。あの、」

なにかアミを納得させるだけの言い訳を思い付こうと頭をフル回転させるが、こんなオツムで名案が浮かぶわけもない。

思わずどもった、その時だった。



「生理だからね」

凜とした声が耳に馴染む。

せいり。

まさかそんなグッドアイディアを神様がもたらしてくださるなんて思いもしなかった。


「そう、生理だから!」


乗らないわけにはいかない。
ぱーんと手を叩いて、倫子は声高らかにアミに言い放ったのだが。


「あら、雲雀くんじゃない」

(……ん?)

倫子を通り越し、更に上に視線を上げたアミの言葉に顔面蒼白になる。


「ちょ、なに言ってんだおまえ」

後ろを振り向けば、飄々と立つ雲雀の姿があった。


「本当のことでしょ」

いや、嘘じゃん。





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