AEVE ENDING
「だ、」
「黙れば」
(…いや、確かに、助かったんだけど)
まさか言うに事欠いて、生理。
(あんたの口からその単語が出ること自体、困るんだよ)
(別に構わないんじゃない?助かったでしょ)
いや、そうなんだけど。
そうなんだけどさ。
目の前に立つアミの、急にイヤらしくなった目の色に思わずウンザリする。
「…別に、変な意味はないから。勘違いしないで」
雲雀が静かに牽制する。
しかし火に油だ。
「え…?なにが?あ、雲雀くんが倫子の月経周期知ってること?あぁ、やんやん、そんな無粋なことに首突っ込まないわよぉ。あ、ゆかりが呼んでる」
じゃあね倫子、また後でね。
雲雀くんもさよなら。
またね。
うん、仲良くね。ぷぷー。
そうして明らかに勘違いをした怒濤の嵐は、パートナーのもとへと素早く走り去ってしまったのだった。
これでもかと、いやらしい笑みを浮かべて。
「…お前のせいで」
背後に立つ男に向ける、正論であり意見であり不満。
「助けてあげたつもりだけど」
「そりゃありがてーや」
飄々と吐き捨てる雲雀には、最早ため息しか出てこない。
清々しいまでに、寧ろ尊敬してしまうほど他人に無頓着なこの男の手助けは随分と高くついた気がする。
(いや、構わないんだけど)
助かったのは事実だ。
濁濁と血にまみれていたと言うより、生理だと言い訳したほうが平和的だし心配をかけない。
確かに、助かったのだけれど。
「…パートナーんとこ、行きなよ」
今はもう、私はあんたのパートナーじゃない。
そう言えば、雲雀はどこか意味深な視線を投げ掛けてきた。
話があるのか、と見つめ返すが、雲雀は口を開かない。
「……なに?」
倫子が尋ねて、雲雀はその耳に唇を寄せた。
「鍾鬼が、君のことを知りたがってた」
「なんで」
「…僕が構うから」
耳元に息が掛かる。
艶やかでまろやかで、そして吐きそうなくらい、甘い。