AEVE ENDING
「神が二体、この国に降り立っているとか」
牙を剥いた蛇が嗤う。
暗く淡い室内の壁紙に溶け込むように、蛇は身を潜めていた。
外気は冷えるが、この部屋に暖房はない。
外気の冷たさとはあまりにかけ離れた冷気が、部屋に充満していた。
蛇の正面――─部屋の奥に座す男の顔は、分厚いカーテンに邪魔されて見えない。
見える必要もなかった。
「…破壊神と守護神だろう」
蛇につられて、顔のない男が嗤う。
それは、大気を振るわせるように響くさざ波だった。
「随分と、対照的だ」
男が手にする人形の、上下に分かれた口がカタカタと鳴いた。
その音が好ましいと、男は孕むような笑みを浮かべ。
「…時間が惜しいのでは?」
蛇が、問う。
彼の主である男は、その問いに唇を歪めた。
「時を急くなど、人のすることだ。我々は待てばいい」
───ただ、待てば。
「…種は、芽吹きましたか」
蛇がその睫毛のない瞼を閉じる。
口許では緩く弧を描きながら、際限もなく。
「もうすぐだ…」
そう、もはや急く必要などない。
蒔いた種は、もうすぐ、芽吹く。
その芽は茎と化し茨を捧げ鎖と化して、憐れな贄の羊を繋ぐのだ。
(私の手に)