AEVE ENDING
旧貧困エリアにて、本物の死体を、しかも腐敗した最悪の状態を目にしたアダム候補生達は随分と精神的に成長したらしい。
無駄に騒ぐことも、人間をバカにする言葉も以前より無駄に吐かなくなった。
(…まぁ、ごく一部だけど)
アダムも人間も、朽ち果てれば同様にあの姿になるのだ。
同じように産まれ、同じように死んでゆく。
そこに違いというものがあると言うならば、教えて欲しいくらいである。
あれから二週間、日々それなりに平和に過ごしていた。
セクション中、梶本に虐められたり、他のアダム達に阻害されたりと、以前通りに過ごしていた倫子は、食堂にて夕飯の猫まんまを注文していた。
食堂の給仕係は相変わらず胡散臭そうな眼で倫子を睨みつけ、乱暴な仕草でトレイに白飯を乗せる。
(クソババア)
胸中で呟けば、それなりに満足する。
けれど、セクションを終え、あとはもう休息のみの生徒達がざわつく食堂にて、やはり独りぼっちなのはなんとも言い難い虚しさがあった。
(一人でご飯食ってもうまくないし…)
なんだかんだ言って、結局は雲雀の存在に救われていたことに気付く。
これは成長、だろうか。
考えて、自嘲した。
あの男に甘えていた分、弱くなった自分に蓋をしようとする。
(…皮肉なもんだ)
再び自嘲した倫子を、遠くでアミが呼んだ。
食堂の端、ガラス張りになった一角にて、こっちに来いと手招きしている。
アミの隣りにはゆかりがにこやかに微笑んでいた。
(…アミと食べてもいいけど、したらば必然的にゆかりちゃんも一緒だし。アミは慣れてるからいいけど、ゆかりちゃんに変な火の粉が降りかかるのは避けたいなあ)
さすが奥田がアミのパートナーとして選んだことはある、と納得せずにはいられない。
「イヴ」として蔑まれる倫子に、なんの偏見もなく普通に接してくれる性根の優しい子なのだから。
アミとゆかりの誘いを遠目から丁重に断り、倫子は再び食堂の給仕係を見た。