AEVE ENDING
「―――しんでよ」
冷たい声。
目眩がするような暗闇だ。
珍しく発光もしていない雲が唸り、小さく稲光が走る。
鍾鬼と食堂で別れて、自室に直行してベッドに転がって、そのまま。
(…寝ちゃったのか)
頭の端でぼんやり考える。
それなのに、暗闇に自分以外の気配が、複数。
「……誰だ、あんたら」
知らない臭いがする。
誰もいない筈の部屋に、他人のにおい。
暗い部屋の壁に、影がゆらりと張り付いていた。
「神の使者だよ」
「お前を罰しにきたんだ」
「滅茶苦茶にしてやる」
「神を冒涜した罪人は、直ちに制裁されなければ」
男女混合の声。
随分物々しい言葉を吐く、と思わず笑いが漏れた。
「人の安眠妨害しといて、偉そうな口利くなよ」
不愉快だなあ。
知らず、溜め息を吐く。
こんな寝起きじゃ、顔も姿も見えない不法侵入者を真面目に相手する気にもならない。
(雲雀の狂信者と、ただのいじめっ子かよ)
下らないが、それら複数に囲まれているとなると油断できない。
(…久々だな)
こうして構われるのは初めてじゃないが、部屋まで侵入されたのは初めてだ。
───当たり前か。
雲雀と組む前はアミと同室だったし、セクションが始まってからは雲雀と行動を共にしていたのだ。
(…無駄に守られている)
彼らにすれば、さぞ面白くなかったことだろう。
「…、」
体を起こそうと背中と腰に力を入れる。
───が、動かない。
その事実に気付けば、更に体が重くなった気がした。
「…緊縛趣味がおありですか、変態共が」
肢体を縛るのは紐でも人の腕でもなく、アダムの能力。
目に見えない電子を繋ぎ併せて、強力な糸にする。大した能力だ。
「…その礼儀を知らない口を、今すぐ塞いでやる」
ひとりが憎々しげに呟いた。
今まで倫子が公衆の面前で吐き散らしてきた雲雀への罵詈雑言を揶揄しているらしい。