AEVE ENDING
「馬鹿な、タチバナ」
そうして近付いてきた唇が耳に囁き、頬に口付けた。
(───始めから俺の目的は、君だったのに)
パンッ。
鼓膜が割れる音がした。
抑えていた潜在能力を、鍾鬼が解放したらしい。
距離がないぶん、ぐんと内臓にのし掛かる重圧に、息が止まる。
「…っ、」
密着しているせいで、全身の血が沸騰しそうだった。
脳味噌がどろどろと溶けていく。
思考が定まらない。
視界が、紅く染まってゆく。
―――びちり。
傷口から滴る血液の量が増した、いやな音がした。
ぶちぶちと血管が切れていって、縫合された全身の傷が、音を立ててほぐれていく。
───化け物に。
(また、)
「…っ、ひ、」
もがく腕を、ぎちりと拘束された。
密着した肌が、鍾鬼の力が発する摩擦熱でじゅうじゅうと音を立てて焼かれていく。
───壊されてゆく。
「あぁ、もうそろそろ、肺が潰れる…」
割れた耳元で、恍惚とした声を聞く。
電流が全身を走り抜けては意志に関係なく跳ねる無様な体を、酷く厭うていた。
微かにしか残らない意識すら、過去の肉塊に戻ってしまう恐怖に戦いて。
(…幕が、閉じてゆく)
世界の、終焉。