AEVE ENDING
「…無駄口を叩く前に、仕事に取りかかれ」
鍾鬼の言葉に、双子はにぃまりと嗤う。
「了解しましたわ、主代行」
「さぁ、罪人を咎める時間だ」
両手を広げて、ふたりは嗤う。
「…これ以上見苦しいものを見せて、雲雀様の眼を汚したくありません」
心外な話ではあるがリィのその言葉は正論だ。
蚯蚓が這うように施術痕が目立つ醜い体は、負傷し、肉を噛み契られ、赤黒い血が滴り、もはや、人と呼べるのかも怪しい。
「蟲が群がって、なにをするって言うの?」
カツリ。
雲雀の革靴が鳴る。
意識が痛みに引きずられそうになって、肌を伝う生温かい血液が外気に触れて冷たくなっていく。
―――気持ち悪い。
「橘倫子は連れて行く。この躯は、本人が思っているよりずっと、貴重なものだ」
その言葉が合図であったのか。
朦朧とする倫子を抱きかかえる鍾鬼を、双子が庇うように雲雀との間に立ち塞がった。
「雲雀様、ご理解を」
「この女は、貴方様が気にとめるような存在ではありません」
オッドアイが口々にそう紡ぐ。
それを正面から受け止めながら、雲雀は相変わらず表情を崩さない。
「…気に喰わないね」
ずるりと下る意識の中、雲雀が不愉快そうに眉を寄せたのを見た。
(雲雀…)
あんたが私に固執するのは、ただの支配欲だろうか。
それでも、踏み込まれたくない領域が確かに存在している。
『おねえちゃん』
『た、すけ…』
(誰にも知られたくない醜く罪深い過去が、あるから、だから)
素直に、あんたに歩み寄れない。