AEVE ENDING






「倫子、倫子は…!」
「静かにして」

───彼女は、間違いなく今は気絶している倫子の「友人」だった。

(…お荷物ができた)




「倫子、…っ」

惨状に我を忘れ、雲雀の腕の中でもがいていたアミが倫子の姿を認める。
一糸纏わぬ姿で、傷口から赤い血を流す、真っ青な倫子の顔、を。

「ひ、雲雀、く…」

そんな姿の倫子が何故、留学生に抱かれている?


「少し黙って」
「待ってよ、なにこれ、なんで、…っ」
「───橘が大切なら、黙って」
「……っ、」

狼狽えているアミを一言で黙らせ、雲雀は再び鍾鬼に視線を向けた。

酷く愉快げに嗤うその表情が、殺してやりたいほど気に喰わない。
その腕に抱かれた、傷ついた倫子の姿も、その体に巻き付く、不躾な腕も。

───なにもかも、踏みにじりたいほどに。



「邪魔が入ったようだ」

不機嫌を露わにする雲雀を前に、悪びれもせず。

なんてわざとらしい。
今、雲雀が守るべき相手は倫子ではなくアミだと、承知の上で。

(ちらつくのは、)



「ちょっと、どういう事!?倫子をどうする気よ!」

雲雀が腕に囲んでいるアミが叫ぶ。

今にも噛みつきにいこうと、酷く苛ついた様子で留学生を睨み付けている。



『アミ、アミ、アミ』

彼女の名前を、愛しげに胸に抱く、のは。



「…罪深い林檎が愛したものを、神が奪えるわけもない」

可笑しげに嗤う鍾鬼に、雲雀は端正な顔を歪めることなく。

「…そうだね。コレを蔑ろにすれば、口喧しい林檎がそれこそ黙っちゃいない」

コレ、とはアミの事である。
アミを取るか倫子を取るか、この状況を見ればそれは明確だ。

(橘を奪い返せばコレが危うくなって、そうなれば、橘が、)





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