AEVE ENDING





「とにかく、私は反対です」

先程から口煩い梶本が、怒りに震えながら言い放った。
雑多な作りの顔を真っ赤にし、奥田を見ている。

「え、なにが?」

そんな奥田は睨みあう雲雀と倫子を面白そうに眺めながら、梶本の反対を間抜けにも聞き返した。
その反応に更に激昂した梶本が、声を張り上げる。

「この采配ですよ!我が校の誇りである修羅のパートナーが、こんな下品で低脳な、アダムのなり損ないなどと!」

とうとう叫んだ。

「オイこら待て」

梶本の教師らしからぬ発言に、倫子は思わず冷静に突っ込む。
そんなに修羅が大事なら懐のなかに抱き込んで大事にしていればいいのに。

(…まぁこの男が、素直におさまるわけもないか)

梶本の言葉に、生徒達が一斉に声を上げる。
梶本の言葉に賛成大多数。
できれば私もこいつとのペアは辞退したい。


「西部にも会長が居るでしょう!能力でもスキルでも気品でも!そこのイヴとは比べものにならない!雲雀くんのパートナーには彼女を推薦したい!」

そう教師が声を張り上げると、「西部箱舟の会長」である朝比奈が生徒達の波からするりと前へ出てきた。
仕事熱心なやつである。

「私も賛成ですわ。自慢ではありませんが、少なくとも私は、橘倫子よりアダムとしての能力も、誇りも持っています」

美少女が威勢よく声を張り上げる様はなんとも絵になる。だからと言って、その言葉に倫子が納得できるわけがない。

「…能力がないのは確かだけど、誇りまで捨てた覚えはないよ」

朝比奈に素早く突っかかる倫子に苦笑しつつ、声を張り上げたのは奥田だった。


「はいはーい。喧嘩はやめましょうねー」

幼稚園児でも率先しているような口振りである。
馬鹿にしているのか。…しているのだろうな。


「梶本さんが仰ることも、朝比奈が主張することも、奥田先生、よーく解るけどな」

へらへらと馬鹿みたいな笑みを浮かべながら、奥田は喚き続ける梶本にちらりと一瞥をくれる。

(…眼だけはいつも、笑わない)

だからだろうか。
けたたましかった梶本がハッとして口を噤んで見せた。
この時ばかりはブラボー奥田、である。


「僕がこの采配を口にする前に、あなた、なんて言いましたっけえ?」

にこやかな笑みを浮かべつつ、有無を言わせぬ威圧感で梶本を圧す。




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