AEVE ENDING
「…そうして日本に来てみれば、どうだ?」
首に爪が掛かる。
何故、いつもいつも、こんな立場に立たされるのか。
服従を強要され、地べたに這いつくばることを良しとするような、下賎な生き物として。
「───最高だ。所詮、平和大国日本で修羅と呼ばれる程度のアダムだと見くびっていたのに」
溜め息───否、感嘆。
讃えるようなそれは悦びに打ち震え、まるで世界を祝福するように。
「、」
づ、と鎖骨に吸い付かれた。
硬いが、細く脆い骨がひくりと跳ねる。
「───あんな美しい神を、見たことがない」
或いはそれは、捕食される側の餌が、自らを狙う上等な獣に焦がれるような。
「あの高ぶりは、今でも忘れられない」
雲雀と名を持つ神が纏う、猛牙をそのうちに隠す静かな流水と規律を。
「あの大きな波に飲まれたいとさえ、」
そこまで吐き捨てると、鍾鬼は我に返ったように馬鹿馬鹿しい、と舌打ちした。
「…あんたは、雲雀が」
好きなのか、と口にする前に凍り付くような視線で制される。
お喋りは無用だと無言で表されるように、呼吸を絶たれた。
「…そしてお前も」
まさか、修羅との関係が仲睦まじくあるとは予想もしていなかった。
「憎らしく、修羅を、殺したいほど憎んでいるものだと」
―――それは、事実だ。
「あの美しい神を、」
望みは、なに?
「…死ぬほど思ったよ。殺してやりたいと。あの綺麗な顔を滅茶苦茶にしてやりたいって、何度も」
それこそ、あの艶麗な姿を目にする度に。
「あの綺麗な顔を歪ませて、痛めつけて、罪を背負わせて、」
───それなのに。