AEVE ENDING






―――恐らく、この世はそうして出来ているんだ。



明確は資料は残されていないが、倫子がまだ産まれもしない、彼女の父母も、その親すら、更にその前の世代すら産まれていない遙か昔。

今でいう核乱戦争なるものが、世界中で起きた。
詳しい事は現時点ですら国民には知らされていない。


(…まぁ、知る必要もないと思うし)

そんな昔の事を悔いる前に、恨む前に、この貧しい毎日を生き延びることが人々には大切だった。


一説によれば、当時、つまり戦争勃発直前、世界中と折り合いが合わなかった独立国――懐古的な専制政治国家だったらしい――が、代変わりを境に軍事国家へと目覚ましい発展をした。
彼らは世界支配のため、手に入れた軍事力を矛に、大国へと牙を剥いた。
その事件は世界中を触発し、泡や多くの国を巻き込む乱核戦争へと発展してしまったのだそうだ。

勿論、これは専門家が語る一説であって、事実なのか作為的な偽装なのか定かではない。

乱核とはよく言ったものだが、それこそ、自国の防衛すら疎かにただひたすら、隣国やら大国やらを武力行使でひれ伏させる争いが続いたらしい。

その時、犠牲になった国民達の苦しみは想像に難くない。
当時は、悪魔の再来、キチガイの暴走と畏れられたそれは、「具体的目的のない闘争」、であったらしい。

果たして、被害がひとつふたつの国に収まらず、地球全土に掛けての戦争を「闘争」という言葉で括るのが正しいかどうかはともかく、引き金となった国は戦争勃発直後に自滅とも呼べる終焉を迎え、しかし、始まってしまった乱戦自体が幕を引くには全てが遅かった。





< 583 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop