AEVE ENDING
なまじ文化や科学、医学が発展していた分、安楽な生活に慣れきってしまっていた人間達が、苔を舐め石を喰らい同類の血肉を啜る地獄に耐えられる筈もなかった。
今まで国が隠蔽していた国営軍直参で行われていた実験の産物――最先端のバイオ化学からは、生物兵器なるものが産み出され、それが原因で、戦後生き残った人々の数も半分になった。
それこそ復興など夢のまた、夢。
まるで神の下された大規模な掃除のようではないかと、誰かが嘆く。
もう少しセンスのある言葉は出なかったのかと、その「誰か」の知性を疑うも、この凄惨たる汚い世界で正気を保ちあまつ嘆く気力があっただけその「誰か」、はタフな人間だったのだろう。
そしてまさしくそれは、人類自らの手できれいに洗い流されたこの世界を揶揄する全うな言葉である。
掃除、というにはあまりにも根本的で、例えればそこにある家具も本もテレビもベッドもなにもかもひっくり返し洗い流してしまうような、部屋自体を空っぽにしてしまう横暴さがあった。
そしてこれは明らかなる人災である。
人の世界は一度、人の手を以て終わりを迎えたのだ。
―――それは、神の采配であったのか、人の愚かさであったのか。
豊かで潤沢な星は枯れ果て、人も荒んだ。